2014年12月31日水曜日

2014年面白かった本まとめ

年末なので、備忘録を兼ねて今年読んだ本の中で特に面白かったものを10冊選んでみた。
個別に書評記事を書いていないものを多めに含むようにしてみた。

1. ケン・ウィルバー『統合心理学への道』

僕の思想に最も大きな影響を与えてくれたケン・ウィルバー。
その「インテグラル理論」について知る上でとても分かりやすい名著。
一般には『万物の歴史』が入門書としておすすめとされているが、個人的にはこちらの方がはるかにわかりやすく感じた。
ウィルバーの射程の広さ、深さと、その理論の緻密さは本当に味わい深く、内容以上に読書している体験自体が実に心地よい。
定期的にウィルバーに立ち戻りながら読書していくというサイクルが気づいたら生まれていた。

2. ルドルフ・シュタイナー『社会問題の核心』

シュタイナーの「社会有機体三分節論」について学ぶことができる。
20世紀初頭にすでに資本主義と社会主義の行き詰まりを見抜いていたシュタイナーが構想した社会思想は、現代における社会の未来を考察する上でも非常に示唆に富んでいる。
シュタイナーといえばそのオカルティックな思想から敬遠されがちであるが、社会思想は比較的読みやすい。
『社会の未来』と併せて読めば、その思想について概観することができる。

3. ウォルター・J. オング『声の文化と文字の文化』

インテグラルエデュケーション研究会の参考図書として読んだ。
言語と発達というテーマを考察する際に、文化人類学的、歴史的にとても奥深い視点を与えてくれる。例えば、内省という思考形態が言語とどのように関わっているのか、といった内容はこれまで自分は全く思いつかなかった衝撃的な内容であった。
こうした優れた研究が昨今語られる「教育」というものにどれだけ活かされているのか、慨嘆したくなる。
教育の実践に身を置く人にはぜひ読んでほしいと個人的に思っている。

4. 西村拓生『教育哲学の現場』

実践の場から教育哲学を考察する、所謂”臨床教育哲学”的な視点から新しい教育の公共性を論じた著書。そもそもの教育哲学をメタ的に分析しつつ、著者の実体験に基づく事例が興味深く描かれており、非常に面白かった。
取り上げられている課題はどれも深く共感できるものばかりであり、それに対して明確な回答を示している訳ではないが、著者自身もまた悩みながら探求し続けているという姿が感じられた。

5. 天野郁夫『教育と選抜の社会史』

戦前の日本の教育制度から、歴史社会学的手法によって日本における教育と選抜のしくみがどのように形成されてきたのかを論じている。
また、そうした日本の仕組みをドイツやフランス、イギリスなどと比較しながら、日本の教育、選抜システムの特異性を鮮やかに描き出している。
著者の明晰さがにじみ出てくるような簡潔で分かりやすい文に、あっという間に引き込まれて読みきってしまった。
教育社会学的な基礎知識を求めて読んだのだが、それ以上に文の素晴らしさに感銘を受けた印象が強い。

6. V.フランクル『苦悩の存在論』

自分自身が非常に苦しい時期にある種の救いを求めて読んだ本であった。
「態度価値」や、「それでも人生はイエスと言う」といったフランクルの哲学には、当時も強く興味を持ったが、その意味が分かり始めたのはどうもごく最近になってからのように思える。
生きる意味という普遍的な難題について、徹底的に考え抜かれたフランクルの思想は、間違いなく自分の核を形成する思想の一つになっているという実感がある。
また、こうした哲学こそ、教育の場において何かできることがあるのではないかと感じるのである。

7. J.クリシュナムルティ『既知からの自由』

クリシュナムルティの思想もまた、今年自分に大きな影響を与えた思想である。
彼の「あるがままを観察せよ」という思想は、もはや思想を越えている。
思想ではないゆえに、語られる言葉は至って平易であり、万人に伝わり、同時に理解しがたいものでもある。
なぜならそれは、思想を持つ以前の在り方について”無理やり”述べているからである。
思考以前の段階の存在にふと気づいた時、前述のフランクルやシュタイナー、ウィルバーが述べていることがつながってきたように思えた。
観想的な知に触れるには、読書や思考だけしていても意味がないということを教えてくれた一冊である。

8. ローレンス・コールバーグ『道徳性の発達と道徳教育』

道徳性というものが国家、民族、人種を越えて普遍的な発達段階を経て発達していくという道徳性発達の研究と、それを道徳教育にどのように応用していくか、という観点から彼の講演録をまとめた本。
道徳性に発達という法則を見出したコールバーグの洞察の鋭さには舌を巻いた。そこから発達という”現象”について、独自の興味深い考察を行っている。
正直なところ、訳がそれほどよくないのか、あるいは自分の読解力が足りていないのか大分読み進めるのが辛かったのだが、それでも大きな示唆を与えてくれる必読書であると思う。

9. 熊野純彦『西洋哲学史』

哲学を本気でやるつもりは毛頭無いが、必要な読書のための概説的知識を求めて「哲学史」を手にとって見た。
しかし、熊野氏の哲学史は、わかりやすく教科書的な哲学史ではない。
哲学史でありながらどこか哲学的、いや詩的な文体は、不思議な思索とイメージを内面へ投影してくる。
見事に哲学というものを概観してやろうなどという傲慢を恥じることになった。

後に多少勉強して再読してみると、一般的に語られるものとは少し異なった独自の視点からそれぞれの哲学者を取り上げていることが分かる。
不勉強故にこの本の魅力を全く味わい尽くせていないので、また時を置いて挑戦してみたいと思っている一冊である。

10. ロバート・キーガン『なぜ人と組織は変われないのか』

本書もインテグラルエデュケーション研究会での課題図書である。
組織変革における個人の変容というものを、知性の発達と結びつけて論じた研究が非常に興味深いものである。
その方法論をよくよく見てみれば、クリシュナムルティにも通じるようなところがある。
本書の射程は、理性的思考の段階までであるが、ウィルバーやクリシュナムルティと併せて読めば、確かにこの研究はスピリチュアル段階へ接続されるものであるように思う。

組織変革の方法論を求めて読むにも十分に得るものがあると思われるが、それ以上に意義のある研究であると個人的に感じている。




















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